バレエ白鳥の湖 異なる演出やストーリー どれがお好みですか?

バレエ作品のこと

クラシックバレエといえば、誰もが知る作品のひとつに、白鳥の湖があるのではないでしょうか。私も大好きな演目で、何度も舞台を観に行きました。

子どもの頃、素朴に疑問だったのが、なぜ結末が色々違うのかな?ということ。
ある時はハッピーエンドだったり、ある時は悲しい結末だったり。公演へ出かける道すがら、「今回はどの結末なんだろうな?」と思いながら劇場に向かっていた記憶があります。

今回は、世界中で上演される「白鳥の湖」の様々な版について書いてみようと思います。バレエをよく知らないママも、お子さまと一緒に会話を楽しめて、劇場に足を運びたくなる!こと間違いなし!

是非、観に行く公演を選ぶ際の参考になさってください。

白鳥の湖のよく知られるストーリー

現在、よく知られる白鳥の湖のストーリーは以下のようなものです。

20歳の誕生日を迎えた王子ジークフリートは結婚相手を選ばなければならない。

それに憂い、狩りに出かけた湖でオデット姫に出会う。オデット姫は、悪魔ロットバルトの手によって、白鳥の姿に変えられ、夜だけは人間に戻れるという呪いをかけられている。

王子はオデットに愛を誓うことで呪いを説くことを約束。

しかし翌日の舞踏会で魅惑的なオディール(黒鳥)と出会い、オディールに愛を誓ってしまう。

悲しみの中のオデットと、許しを請う王子。果たして結末は?

そもそも、バレエの「版」ってなに?

クラシックバレエに馴染みのない人にとって、バレエ作品における「版」の考え方ってしっくりこないのかもしれません。

バレエは、言葉がない芸術で、とある物語をバレエで表現する場合には、踊り(振り)と音楽でストーリーや登場人物の気持ちを語ります。

言葉が無い分、表現は自由!どんな解釈をしようと自由!ということで、その時代時代で演出家たちが、様々独自な改定を加え、それが今日「版」と呼ばれる形で伝わっているのです。

バレエ以外の世界で分かりやすくいうと、映画などの「リメイク」がこれにあたります。

例えば、「映画ドラえもん のび太の日本誕生」

私たちが子どもの頃に見ていた「日本誕生」のテーマはそのままに、同じストーリーに対し、アイテムやセルフを改良したり、設定に統一感を持たせたり、新たな演出で表現し、大ヒットしました。

こんな感じで、バレエも、初版から改良改変を繰り返し、その中で称賛を得たものが、今日に伝わっているのです。

白鳥の湖 代表的な版

ライジンガー版(白鳥の湖の初演)

1877年 ボリショイ劇場

ライジンガーが、ボリショイ劇場のために振り付けたと言われるライジンガー版。

初演の評価はボロボロで、チャイコフスキーが大変脱力したと、以前、NHKでやってましたが、最近になって、実はそうでもなかったという説が出てきているそうですよ。

ただ、現実問題、この版は現在に資料がほとんど残っておらず(リハーサルの台本が発見された!と話題になったこともありましたが)色々な説は、あくまで「説」の域を出ません。

ということで、ここで語れることもほぼ無い(笑)

マリウス・プティパとレフ・イワーノフ版

1895年 ペテルブルク マリインスキー劇場

プティパはバレエの父と言われる人物です。様々な作品にこの父が関わっているので、プティパ視点でバレエの歴史を調べてみても面白いかもしれません。

初演が不評に終わり、廃れつつあったバレエ白鳥の湖を復刻させた、偉大な振付家で、今日上演されている白鳥の湖の土台はここにあります。

面白いと思ったエピソードは、実は、公演の一週間前になっても黒鳥の配役が決まっていなかったということ!
こんなことって、現代ではあり得ませんよね。。。

やむなく白鳥役と同じダンサーが踊り、華麗なる32回フェッテ(3幕の踊りの中に出てくる連続の回転技です)を決め、これが大受けし、以降の定番配役になったそうです。

物語の主軸は、「裏切られた悲劇の姫、オデット」です。以降、ヌレエフ版が誕生するまでの間、この版を基に様々な書き換え、演出がなされます。

ソビエト時代、結末はハッピーエンドでなくてはならないという当局の主張なんかもあったそうで、王子、オデット、ロットバルト、誰が勝って、誰が負けて、誰が死んで、天国で結ばれて、現世で結ばれて、、、結末は様々です。

白鳥の湖の物語性と、バレエの歴史を感じますよね。

コンスタンチン・セルゲーエフ版

1950年 キーロフ・バレエ団

ストーリーはプティパ、イワーノフ版が基となっていて、白鳥と黒鳥が一人二役が定番となり、家庭教師の代わりに道化が登場したのは、この版からだそう。

でも、道化ってストーリーには全然関係ないし、初めて見たときには、何者?って感じますよね。唐突感が半端ないです(笑)パーティの盛り上げ役、かつ、王子の相談相手という設定と覚えておけばよいです!

純粋に、道化の踊りや、衣装、素晴らしい技術を楽しみましょう~

ウラジーミル・ブルメイステル版

1953年 モスクワ音楽劇場バレエ団

ストーリーはプティパ、イワーノフ版が基となっていて、プロローグとして、人間のオデットが白鳥に変身させられる演出が加えられています。

最後、エピローグでは、白鳥から人間に戻る姿を表現することで、ストーリーとしての一貫性を持たせています。

この演出は、物語の始まりと結末を、分かりやすく、しっかりと見せてくれるので、私たち観客は物語に入り込むことができ、すっきり納得感のある鑑賞後を迎えることができます。お子さまが鑑賞する場合にも、感情移入できるので、分かりやすくお勧めです。

ルドルフ・ヌレエフ版

1964年 ウィーン国立歌劇場バレエ団
1984年 パリ・オペラ座バレエ団

この版では、ジークフリード王子の役割をオデットと同等まで引き上げたと言われています。

どういうことかと言いますと、プティパ、イワーノフ版では、王子は物語に登場はしますが、あくまで主役はオデット姫。オデット姫の深い悲しみを軸にストーリーが展開します。

しかし、ヌレエフ版においては、王子が成人式を迎えた憂いや、結婚相手の選択を迫られた独身最後の夜。。。そして、そんなときに出会ってしまった美しきオデットに1日で愛を誓う危うさ、次の日に全く違う黒鳥に心を掴まれる愚かさなど、王子の心の変化にもスポットをあてて描かれます。

なんとなく、人間くさいジークフリード王子に、共感する観客も多いのではないかと思います。

もしかすると、小学生にはまだ難しい心情かもしれませんが、中学生くらいからなら、ヌレエフ版で「男の人間臭さ」を堪能でき、ママと子の会話も弾むかもしれません。

まとめ

ここまで、白鳥の湖で代表的な版と、特徴を述べてきました。

版の特徴を知れば、数あるバレエ団の公演からどれを観に行こうか迷ったとき、お子さまと会話しながら、選ぶことができると思いますよ。

そして、お子さまも、自分で選んだ公演であれば、そこから学びを得ようとする姿勢も数段アップするはずですし、純粋に楽しむ気持ちも増すと思います。

色んな版を見比べながら、是非、バレエの歴史と演出家の想いを受け取ってくださいね!